Ellen Arkbro & Johan Graden 「I get along without you very well」
この商品のレビュー
同郷の友人のジャズ・ピアニスト、ヨハン・グレイデンと組んだ、親密かつ綿密な共同制作よる、スタンダードな雰囲気を醸しながらも前衛性・先進性も持ち合わせ、静寂さと激情を同時に感じさせつつ、息遣いと空気感がリアルに伝わる圧倒的なアンサンブルは必聴!
2009年、二人の高校生時代にヴォーカルとピアノの演奏からスタートした関係が、数年前に新たなコラボレーションで復活し、その後何年かに渡り、地元スウェーデンのストックホルムの優れたミュージシャンやインプロヴァイザー達と共に完成させた、時間の流れを忘れさせるような、タイムレスで至高の傑作アルバム。
カリ・マローン(Kali Malone)やカテリーナ・バルビエリ(Caterina Barbieri)との交流でも知られる、エレン・アークブロ(Ellen Arkbro)は、スウェーデンはストックホルム出身のサウンドアーティスト・作曲家・ミュージシャンです。
ヨハン・グレイデン(Johan Graden)は、スウェーデン出身で、現在はヨルダンのアンマン在住のクラシック界とコンテンポラリー・ジャズ・シーンを行き来する(ジャズ meets 室内楽的な2018年のリーダー作『Olägenheter』がある)ピアニストで、エレンの2017年にリリースされたソロ名義作『For organ and brass』でも共演(オルガンで参加)しています。
この二人による初のデュオ名義のアルバムは、ドローン作家(パフォーマー)・ギター、コンサーティーナ、パイプオルガン、シンセサイザー等のプレイヤーとしての印象が強いエレンの、本格的なヴォーカル(クレジット上はvoice)を全曲フィーチャーした予想外な作品となっています。
エレンのウィスパー・ヴォイスは、マジー・スターのホープ・サンドヴァルを想起させ、同じ北欧(ノルウェーのRune Grammofon)の女性ヴォーカル+ジャズ・エッセンスなSusanna and the Magical Orchestraのサウンドを思い出させたりもするが、より荘厳で、儚げで、時に重厚で、クラシカルな要素もあるが、それでいてヴォーカルと生楽器(ヨハンのピアノだけでなく、木管楽器、ブラス、コントラバス)やシンセのアンサンブルが有機的かつ繊細にブレンド(適材適所に配置)され、適度な緊張感を湛えながらも、非常に聴き心地の良いアルバムに仕上がっています。
ヴォーカルと生楽器による新たな表現を実践したビョークの『フォソーラ』(バス・クラリネットを大胆に使用)、ルクレシア・ダルト(Lucrecia Dalt)の『¡Ay!』(ダブル・ベースやトランペット、クラリネットやフルートを効果的に使用)にも呼応するかのような、2022年の隠れたマスターピース。
ホーギー・カーマイケル作の、チェット・ベイカー、ニーナ・シモン、ビリー・ホリデイ等の歌唱で知られる名曲と同じアルバム・タイトルも、内容と絶妙にリンクし非常に秀逸。
解説は、最新作『Quiet Corner - Always By Your Side』が発売されたばかりのQuiet Cornerの山本勇樹さん、ご自分のnoteにて素晴らしいレビューで本作を紹介して下さったよろすずさん(Shuta Hiraki名義でのアルバム『A Wanderer』をリリースしたばかり)、そして本作に惚れ込んで日本盤をリリースすることを決めたHEADZ主宰の佐々木敦が担当しております。
日本盤CDのみのボーナス・トラック 1曲(アルバム収録曲に勝るとも劣らない新曲「Postcard greetings」)収録。
解説・歌詞・対訳付(Thrill Jockey盤には歌詞は掲載されていません)
【Track List】
1. Close
2. Out of luck
3. All in bloom
4. Never near
5. Temple
6. Other side
7. Love you, bye
8. Waqt
9. Postcard greetings
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