Helios 「Espera」
この商品のレビュー
近作はノンビートのアンビエントだったが、本作ではビートも導入し、生楽器、エレクトロニクスをバランスよくブレンドし、魅力的でヒプノティックな曲と、キャッチーな軽快さのバランスをとっており、Heliosが魅力的な交差点にいることがわかる秀逸な作品。
マルチなコンポーザーとして活躍する、Keith Kenniffのカタログは、2004年以降、Heliosとして十数枚、Goldmundとしてほぼ同数のリリースに及んでいる。Goldmundはポスト・クラシカル・ピアノを好み、パートナーのホリーとのプロジェクトであるMint Julepはシューゲイザー・ポップである。Helios名義では、ミニマルなアンビエント・エレクトロニクスと、より強固なインストゥルメントの間を行き来し、そのすべてをミニ・カセット・レコーダーに通して独特のゆらぎを生み出している。
2018年にGhostly Internationalと契約して初のアルバム『Veriditas』では、構造よりも質感を重視し、ハーモニックなサウンドで緑豊かな風景を形作った。続く2020年の『Domicile』では、さらに静かなシンセ音色の室内への頌歌をみせた。そしてこのたびリリースとなる『Espera』の音楽は瑞々しく生き生きとしており、おそらく彼の作品の中で最も特異なものだろう。彼の作品においてタイトルは重要であり、スペイン語で「待つ」を意味する”Espera”は、このプロデューサーの忍耐強くシネマティックな技巧を物語っている。このアルバムは、魅力的でヒプノティックな曲と、キャッチーな軽快さのバランスをとっており、Heliosが魅力的な交差点にいることがわかる。
近年、このプロジェクトはビートレスのカテゴリーにきれいに収まっていたが、本作の制作過程でアコースティックと電子音の両方でダウンテンポのパーカッションを取り入れ、自然に引き寄せられるのを感じた。アレンジはギターとピアノのレイヤーを重ね膨らませていき、彼のいつものテープ処理によって、より暖かく、より親しみのある感触、自家製でありながら広がりがあり、活気がありながら平和的である。「楽器の質感の美学は、メロディーやハーモニー、リズムそのものと同じくらい重要だった」と彼は付け加える。
『Espera』でのKeithは豊かなディテールに傾倒しているプロデューサーでありマルチ・インストゥルメンタリストであり、彼が見てきた眺めはこれまで以上に広く魅力的である。
※解説付き
【Track List】
01. Fainted Fog
02. Intertwine
03. All The While
04. Every Time
05. Impossible Valleys
06. Lineoa
07. A Familiar Place
08. Lowland
09. Well Within
10. Emeralds (ft. Hollie Kenniff)
11. Rounds
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