TOMOYA NAKA 「ELEMENTS」
この商品のレビュー
作曲はもちろん、コンポーズもTomoya Naka本人がおこない、東京をベースに訴求性を高めているレーベル〈Ricco〉からYuki Murata(Anoice,RiLF)がピアノの演奏を担い、そのレーベル・オーナーのTakahiro Kidoがミキシングを担当。
また、今作のA&R面でのディレクションとプランニングを行なったKatsuyuki Taguchi の存在もあり、東京から電子音楽を主軸に良質な作品を提供し続けている〈AY〉からのリリースとなった。
ポスト・クラシカルに属する要素が強くうかがえ、たとえば、ダスティン・オハロラン、ジャン・フィリップ・コラール・ネヴェン、ヤロン・ヘルマンに通じる繊細さと冒険性が現前しており、また、要所には、アンナ・ローズ・カーターさえも思わせる、上品でたおやかな翳りを帯びたピアノ・タッチからはサイレント・フィルムのような、ざらりとした質感とこまやかな息遣いがかすかに遠く聴こえてくる内容に。
そして、饒舌なピアノがふと息を止める瞬間のいとまに、ただ、音は故意の響きを惹起せしめる。
西洋楽理書をひもとけば、ピアノの丁度、中心にあたる鍵盤から出すことができる、一気圧下での一秒間、四百四十回もの空気を揺らせる音は「A」と呼ばれる。日本では、「イ」。Aからアルファベットが拡がってゆく過程が、このアルバム・タイトルたる“Elements”を示唆する気がする。要素、成分そのものということ、と、曲中の音を構成する体系と記号、それらをしたたかにはぐれる側道までを包摂する意味性。
最後には、幽玄にMiho Suzukiのフィメール・ヴォイスも聞こえてくる。曲名は「Requiem」。つまりは、遠い声と、近いピアノをなだめるようなフィーリングを縫いとめた上で、鎮魂のための静謐な祈念のような何かの残映がかすむ。
01.Flamme
02.Berceau
03.L’éclipse lunaire
04.Noctiluca
05.Météore
06.Mer de sable
07.Rainy Song
08.Mariée en juin
09.Bouquet de lumière
10.Berceuse
11.Amour ex machina
12.Forêt de pierre
13.Polka dot
14.Le chemin du soleil
15.Croissant de lune
16.Requiem
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