イ・ラン 「神様ごっこ(増補新装版)」
この商品のレビュー
2010年代、韓国ソウルの自立音楽シーンを象徴するマルチ・アーティスト
絶版となっていた2016年発表のエッセイ+セカンド・アルバム、待望の増補新装版。
2016 年秋のリリース以来、その歌声、文章、活動姿勢やインタビューを通しての発言が大きな注目を浴び、1年で初版2,000 部を完売した韓国ソウルのマルチ・アーティスト、イ・ランの名作『神様ごっこ』の増補新装版。今回は初版の箱型パッケージではなく、CD を収める二つ折り厚紙ホルダーと本のセットへとパッケージを変更、初版発売時にリクエストの多かった韓国語の原詞を巻末に掲載し、また、2017 年暮れにその後の気持ちを綴って自身のSNS で発表した2ページを追加しての再登場となります。
MacBook のGarageBand でみずから制作・録音した自作曲をそのまま収録したファースト・アルバム『ヨンヨンスン』で鮮烈なデビューを果たしてから4年、多くのファンが待ちわびたニュー・アルバムは、彼女の抱える葛藤や不安、日々の疑問を綴った長編エッセイと新曲10 曲を組み合わせた「読んで聴く」オーディオブック作品となりました。
困難な人間関係や家族のこと、大人になる悲しみや仕事、別れや死について……彼女のペンは自身の生活や思考をありのままに描くことに躊躇することなく、それが、ときにあまりにも赤裸々で痛切に感じられもしますが、全体に漂うほろ苦いユーモアとペーソスで読者はまた著者の「生」へと向き合うこととなります。大なり小なり問題を抱える私たちにとって、きっと『神様ごっこ』は発想の転換やそのヒントを手渡してくれる大切な一冊となるでしょう。
また、ホームレコーディング作品だった『ヨンヨンスン』から一転、今回はチェロ奏者のイ・ヘジ、ドラムスに404(サーコンサー)のチョ・インチョル、 さらにソリミュージアムのイ・デボンやソンキョルのキム・ギョンモら、手練のゲスト演奏家たちを迎え、精緻なアンサンブルに音楽家イ・ランの成長がはっきりと刻まれる力作となりました。
冒頭の「神様ごっこ」で聴かれるポスト・クラシカル・フォークと言えそうな新機軸や、「悲しく腹が立つ」のようなアトモスフェリックなアンビエント・ポップまで、ぐんと幅と奥行きを広げたイ・ラン第2章をお楽しみください。
【付属長編エッセイより抜粋】
人生のさまざまな要素のうち、私は楽しさを最優先に生きてきた。愛に満ちた人生、幸せな人生がどんなものかはよく分からない。私にとっては、楽しい人生こそが最善の形らしい。でも、楽しい人生とは、いつも笑顔で踊り出さずにいられないようなものではないと思う。むしろ眉をひそめた表情に近いもののような気がしている。例えばこの文章を書いている私の表情みたいなものだ。考えたことを字で書き、また考え、煮詰まったら友達とおしゃべりして、再び考えを整理して書く。この文章の題名を考え、どんな挿絵をつけるか悩む。そうして完璧な1ページをつくり出す気分が「楽しい」のである。考えることが、それを話すことが、歌うことが、そして書くことが楽しいのだ。
イ・ラン(이랑):韓国ソウル生まれのマルチ・アーティスト。シンガー・ソングライター、映像作家、コミック作家と活動は多岐にわたる。2006年、アマチュア増幅器(ヤマガタ・トゥイークスター=ハンバのソロ・プロジェクト)の「金字塔」のカバーから音楽活動をスタート、日記代わりに録りためた自作曲が話題となり、ソモイム・レコーズと契約。2011年9月にシングル「よく知らないくせに」でデビュー。2012年春に初来日ツアーを実現させ、夏にアルバム『ヨンヨンスン』をリリース。韓国インディー・フォーク・シーンとびきりのニュー・タレントとして大きな注目を浴びる。2016年6月にはヘリコプター・レコーズから『新曲の部屋』コンピレーション、続けて4年ぶりとなる2枚目のオリジナル・アルバム『神様ごっこ』をリリースする。
【Track List】
1. 神様ごっこ
2. 家族を探して
3. 物語の中へ
4. 悲しく腹が立つ
5. 笑え、ユーモアに
6. 東京の友達
7. 平凡な人
8. 世界中の人々が私を憎みはじめた
9. 私はなんで知っているのですか
10. 良い知らせ、悪い知らせ
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