Of Monsters and Men 「Beneath the Skin」(アイスランド国内専門流通盤)
この商品のレビュー
Of Monsters and Men 『 Beneath the Skin 』
オブ・モンスターズ・アンド・メン待望の第二弾。「ヘイ!」のかけ声と共に全米及び世界的な人気者になったオブモン。あまりにも凄い勢いだったので、私もついていけないくらい。
そんな彼らはもちろん来日も果たし、フジロックにも登場。元々は、Musiktilaunir(音楽実験)というアイスランドの若手バンドコンテストの優勝者として注目された存在でした。
なので、一枚目のアルバムはこのバンド・コンテストの「賞品」として受けたスタジオ時間を使ってのレコーディングで、それほどの気負いもなく、ごく普通のレイキャヴィクのローカル・バンドとしての当たり前の作り。それでも、楽曲がポップで親しみやすく、その上にナンナのヴォーカルの切れと弾みのよさが加わり、ライブをこなしていくうちに、あれよあれよという間に人気沸騰。
大規模な全米ツアー、世界ツアーをこなした後、故郷のアイスランドでゆっくりしながら曲作りをすすめ、このアルバムのリリースに到っています。
故郷アイスランドでのリアクションは非常に暖かなもので、あまりにもファースト・アルバムがヒットしてしまったので、「2枚目、どうしたもんでしょうかねぇ?」と何気なく関係者に投げたところ、「1枚目がヒットしてよかったじゃん。彼らにはいい経験になるし、二枚目で転けたって、アイスランドに戻ってくればいいだけだから」。その通りなんだなぁ、と。レイキャヴィクではかなり国際的に有名なアーティストでも、普通のカフェでバイトしていたりするのは当たり前だし、ビョークやシガーロス級の大物にならないと、アイスランドに家を持ち、かつ音楽アーティストだけで生活していくことは出来ない。だから、どうにでもなるというのは本当のこと。
また、ビョークを筆頭に、国際的なアーティストも(人口比にすると)大勢存在しているので、一枚目だけのヒットになったとしても、確かに「若い時にいい経験できてよかったじゃん」で終わっても何でもない。人生に何も起きずにそのままアイスランドに留まるよりもいいのだから。
という周囲のリラックス・モードとは裏腹に、たぶんオブモン自身、特にナンナにはすごいプレッシャーがあったと思うけれど、それでもきっと、アイスランドという地が、そんな圧力も随分と和らげてくれたのでは、と。ま、彼らの故郷がアイスランドであり、私から見れば特殊だと思えるあの環境も、彼らからすれば当たり前のこと。もっとも東京が特殊すぎるんだけど、私達はそうは感じないんですよね〜。
音楽からは随分と離れましたが、そんな情況の中、彼らは順調にレコーディングを進め、こうしてニュー・アルバムが届いた訳です。前作の「リトル・トーク」のようなキャッチー、ポップ、楽しい!といった曲が姿を消したとはいえ、同じことをやってもねぇという前向きな姿勢であるとも捉えられ、それよりも、ナンナのソングライターとしての成熟度や、グループとしての充実が伺えるしっかりとした中身になっています。
全般には若干ダークでヘヴィな感じになっているのは、どうやらレイキャヴィクのアーティスト全般の傾向のようで、これはVokやAgent Fresco、Soley等、2015年に登場している新譜に共通したことのようです。
それにしてもアイスランド勢の活躍は本当にめざましい。もちろんその代表はビョークであり、その10年後に現れたのがシガーロス、そしてそのまた10年後にオブモンとアウスゲイルが出てきて、それだけで盛況。その間に、ヨハン・ヨハンソンもゴールデン・グローヴ賞受賞の大物になってしまうし、若手のオーラヴル・アルナルズも注目株だし、日本ではムームやKiraKiraなどの人気も手堅く、Sin Fang, Soleyの来日ライブも大成功。ホント、注目すべきアーティストが多くて、まだまだこの情況は続きそうです。
ってまたオブモンから逸れましたが、そんなアイスランドのアーティストの中で、注目される存在がこうして内容のいいアルバムを出してくれて本当にうれしい限り。パっと一回聞くだけだと、前作のように耳に残る曲は少ないかもしれないけれど、逆に何度聞いてもいい感じに心に残る曲が多く、前作よりもこの作品を聴く方が多くなること請け合いの秀作です。
「ICELANDiaショップから商品説明を転記」
【Track List】
1. Crystals
2. Human
3. Hunger
4. Wolves Without Teeth
5. Empire
6. Winter Sound
7. Slow Life
8. Organs
9. Black Water
10. Thousand Eyes
11. I Of The Storm
12. We Sink
13. Backyard
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