Radian 「Distorted Rooms」
この商品のレビュー
オーストリアはウィーンを拠点とするバンド編成による電子音響トリオ、ラディアン(Radian)が2016年の『on dark silent off』(THRILL-JP 48 / HEADZ 215)以来となる、7年振りの新作アルバムをリリース。
現在の編成となっての2作目は、かつての(トータスのジョン・マッケンタイアが録音とミックスを手掛けた2002年の『REC.EXTERN』と2004年の『Juxtaposition』時期を彷彿とさせる)シャープな実験性を更に押し進めたかのように、電子音響処理や複雑なミキシングがより強調され、ポストロック、ポストパンク、ノイズ、インダストリアルといったカテゴライズには収まり切らない、カッティング・エッジなサウンドがより奔放、且つ研ぎ澄まされ、クールでスリリングな音世界となっており、ポップグループやディス・ヒート、バトルスといったこれまで類似を指摘されてきたバンドのファンのみならず、Black MidiやSquid等の新世代ロック・バンドのファンにも十分にアピールする素晴らしいアルバムとなっている。
前作『on dark silent off』が、新メンバーのMartin Siewertのギター・サウンドを意識的にフィーチャーしたかのようなロック的なフォーマットにラディアンを落とし込んだ作品とすれば、今作はラディアンの根幹(オリジナル・メンバーのMartin Brandlmayrの超絶技巧なドラミング、John Normanの重厚でダビーなベースラインは健在)を再構築、ブラッシュアップさせ、ロック的なエッセンスを必然的に加えたような作品となった。
録音・アレンジ・ミックス・プロデュースは、Martin BrandlmayrとMartin Siewertが担当し、マスタリングはMartin Siewertが手掛けている。
1stシングルとして先行配信されたアルバムの冒頭を飾る「Cold Suns(コールド・サンズ)」は、ECMからのリリースでも知られる(Martin Siewertとの共演作もある)ドイツのミュンヘン出身でヴィーン在住の俳優、ヴォイス・アーティストス、Christian Reinerの声(どことなく故マーク・スチュワートを彷彿とさせる)、中村としまるとの共演盤やEditions Megoからのリリースでも知られるオーストリアのエクスペリメンタル・シーンの重鎮的な女性アーティスト、Billy Roiszのエレクトロニクス、Martin Siewert:とBilly Roisz擁するEfzegにも在籍していたdieb13のターンテーブルをフィーチャーし、これまで以上に多彩な音が交差した、非常に混沌としたサウンドながら、刺激的なリズムを整然とキープし、圧倒的なオリジナリティを魅せつける。
アルバムに先行し、2ndシングルとして8月31日に配信を予定している4曲目の「Skyskryp12(スカイスクリップ12)」はヴィブラフォンとアンプを通さないエレキ・ギターで、メランコリックに始まり、曲が進むにつれて(アルバム収録曲の中で)最もドラマティックでエモーショナルなロック的ダイナミズムを際立たせている。
本作は、人力とエレクトロニクスの境界線を見事に曖昧にして来たラディアンの活動の集大成であり、肉感的でありながら、マシーン的とも言える、矛盾が同居した圧倒的なパフォーマンスによるアンサンブルと、より先見的で先進的な音楽アプローチを試みることで、またしても他の追随を許さない、(軽妙さまでも兼ね備えた)新たなラディアンを提示している。
日本盤CDのみの完全未発表のボーナス・トラック1曲収録。
【Track List】
1. Cold Suns
2. C At the Gates
3. Cicada
4. Skyskryp12
5. Stak
6. S At The Gates
7. Segue 2 (Bonus Track)
ツイート