Naim Amor 「Dansons」
この商品のレビュー
1997年、ひとりのフランス男が海を渡り、砂漠の真ん中に降り立ちました。そこはアリゾナ州ツーソン、男の片手には重そうなギターのハードケース。あとで分かることですが、そこにはスパゲッティ・ウエスタン風味の音響アンサンブルという密輸品が隠されていました。その媚薬はキャレキシコのふたりやハウ・ゲルブ/ジャイアント・サンドらの地元ギャングに手渡され、彼はツーソンきっての辣腕ギター奏者/ソングライターとしてメキメキと頭角を現わします。同時にドラマー、トーマス・ベロムとのアモール・ベロム・デュオ、そのデュオにキャレキシコのふたりを加えたA.B.B.C.といったプロジェクト、また、ソロ・アーティストとしてもこれまで2枚のソロ・アルバムに4枚の「架空の」サウンドトラックを発表し、実は「知る人ぞ知る」以上の充実した活動を彼の地で続けているのです。
そして、この『ダンソン』はナイーム・アモール3枚目のソロ・アルバムとなります。まずはアリ・バホーゾの有名なサンバ「ブラジルの水彩画」を思わせる冒頭の「Creole」をお聴きください。天高く駆け抜けるようなファルセット、途中から加わる口笛もゴキゲンです。ボサノヴァ〜サンバのようでいて、ハワイアンやカントリーのニュアンスも随所に、果てはナイーム自家薬籠中の奇妙な音響加工も飛び出し……、とまさに曲名通りの心憎い仕上がり。さらに、テンポの速いサンバ・ジャズにミュゼットのアコーディオン、そこにウエスタン調のトゥワンギーなギター・ソロを被せるという彼ならではのタイトル曲も、エミリ・マルシャンとのデュエットに仕立てた唯一のカバー曲「Our Day Will Come」(オリジナルはルビー&ザ・ロマンティックス)もお聞き逃しないように。
まるでフレンチ・クオーターの喧噪が遠い異国のカルナヴァルに滲んでいくような、懐かしくもいかがわしいポップ・アルバムの愉しみに満たされて……。ぜひ、残暑残るうちに心ゆくまでお楽しみください。ちなみに「ダンソン」とはフランス語で「踊りましょう」という意味だそうですよ。
01. Creole
02. Le Revenant
03. Dansons
04. The Day After
05. Time Is Real
06. On Se Tient
07. The Other Step
08. Son Grand Sourire
09. Our Day Will Comee
10. Sparkling Guitar
11. Waltzsamba
12. Si Tot
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