nemlino「100oracion」
この商品のレビュー
飽和状態にある昨今の日本のポストロックシーンにおいて、これほど素晴らしいメロディーを鳴らすバンドが他にあっただろうか。ただひたすらに未来を信じた、希望に満ちた楽曲が織りなす新世界。暖かな部屋からのぞむ鈍い雲の下に広がる白銀も、新緑の爽やかな風を身体に受け寝転ぶ様も、果ては無音のままどこまでも広がる宇宙空間さえも、この作品にはそんないくつもの情景がつまっている。
多重に絡まりながら天空に昇っていくギター。あどけなく、それでいて凛と歌うピアノ。オーガニックで力強いリズムを刻むベース&ドラム。そして夢の中に響き渡るような儚くも優しい男女ハイトーンツインボーカル。彼らの音楽に散りばめられたひとつひとつの欠片は、誰しもに残る淡い記憶を映し出し、いつかの香りすら呼び覚ますことだろう。
静と動のダイナミクスを活かした曲構成にはグランジ、スロウコア、アンビエントなどからの影響がみられ、歪み漂うギターにはシューゲイザーの面影なども感じられる。しかしながら、それらを踏まえた上でも、彼らの楽曲は紛れもないポップソングなのだ。作品を通して語られる言葉は詩的で柔らかく、人肌の温もりがある。そしてなによりメロディーを大切にしていることが一聴して伝わってくる。人懐こく、くすぐったいほど甘くて、すぐに口ずさみたくなるメロディー。これは歌のみに限らず、各楽器にも共通している。そんな彼らの歌を愛する姿勢こそが、この作品の放つ唯一無二の輝きの正体なのだろう。
01.thanks giving
02.hide & seek
03.sincerer-y
04.universe ☆
05.サンダーソニア
06.birthday ☆
07.手の鳴るほうへ
08.onward
09.100oracion
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